羽ばたくツインテール

神山智洋くんの話

主に、神山智洋の話をします。

世界中の睡眠薬をかき集めたような昨日までのあの甘い眠りはもう2度と味わえない

 

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舞台オセロー連日観劇させていただきました。
ジャニヲタをやっているとシェイクスピアを見ることが結構あります。マクベスハムレット(ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだを見る上でハムレットを熟読した)そしてオセロー、なんと4代悲劇残すはリア王だけだ。誰かやってくれ〜

 

オセローの物語はイアーゴーの独白で進んでいく。

自分が副官になれなかった悔しさから、オセローを陥れようとオセローの義父にあたる存在である に告げ口をする。同郷の友人ロダリーゴーを使って。ロダリーゴーは可哀想なことに最初から最後まで金づるとなっていく、当たり前のようにイアーゴーの駒となっていく。騎士としてオセローと戦場を共にすることになったイアーゴー。やがて、正直者のイアーゴーは勇敢なオセローへホラを吹く。「奥様にお気をつけください」と。こうやって、主役までをも手駒にし、罠に陥れていくのだ。

イアーゴーの「筋書きはここにある」というセリフは一見ナルシーな独り言に聞こえるが非常にこの舞台において重要なセリフになっている。

その後、被害者である可哀想なオセローに同情しながらも、上司に出世を邪魔され悔しい気持ちや、その上司に愛する女を寝取られたどうしようもない怒りを、その上司であるオセローにも味わわせようと罠を仕掛けていくイアーゴーの気持ちにもそれなりに共感しながら話は進んでいく。

 

この物語の面白いところは、極悪至極。とにかく嫌な奴。そんなイアーゴーのことを嫌いになりきれず、終いにはそれなりに共感してしまうところだと思う。

現実世界で犯罪者に肩入れなんかしたら世間から不謹慎だと罵られるかもしれないけれど、この物語ではそんなことはない。
だってそもそもこの物語に、オセローからの復讐やロダリーゴーの下剋上なんて誰も望んでいないじゃないか、ヒーローなんてものは存在しない。悪は倒されない。正直者がバカを見る世界。存在するのはかしこい悪だけだ。ただただ私たちは観客として極悪至極、イアーゴーの手によって作られた惨劇を観ているだけ。

 

そんなイアーゴーだが、普段は従順な僕、闇落ち(済)、時折見せる優しさ。彼は外道だが案外人間味に溢れていて愛おしい。

それなのに、オタク特有の感情移入しすぎることなく、また、恋をすることもない。私たちは彼のことを何も知らないのだ。恋をするまでに至らない。彼の目指す先すら分からない、おかげで、彼の思想に憧れを抱くことはない。心は共にできない。彼に反感を覚え、敵意を持ちそれでもどこか共感してしまう。共感することしかできない。
この舞台で唯一彼と共有できるのはこの舞台における感情の温度くらいだろう。

 

イアーゴーには、どうしようもなく、舞台はあくまでフィクションなのだと思わされてしまう。
この舞台を見る上で私は部外者で観客以上になれない。なる必要もないのだ。
現実とオセローの世界を分離して考えることしかできないのだ。

私はきっとガチ恋になることなく、彼を1ヶ月間観客として観続ける。彼に魅せられる。距離の遠い舞台だ。本来舞台とはそういうもので気づかないだけでずっとそうだったのかも知れない。だけど、どうしようもなく悲しいと思ったしまった。

 

タイトルは一番好きなセリフです。甘くて痛い。